県水送水管耐震化事業 送水管埋設工事
このプロジェクトは、石川県が予算を出している事業で、能登半島地震を教訓に手取川ダムから七尾市まで水道水を供給している既設の水道管とは別ルートで、新たに耐震性の高い送水管を2系統化している事業です。
この事業が完成すれば水道用水の安定した供給が可能になるとともに、災害に強い安全・安心なライフラインを構築することができるようになります。
その中で今回施工したのは、弓取川という川の下を送水管に送水管を通す目的の工事であり、推進工事というトンネルと似た工法で直径1350mmのヒューム管を100m程度押し込んで通したあとで、900mmの水道管をその管内に挿入する工事でした。
この工事の特徴として二つのことが挙げられます。一つ目は管を通す川の下は非常に軟弱な地盤であったこと、二つ目は通常の川下での推進工事は、直線なのですが、石川県では初めての「縦カーブの曲線推進」であったことです。
本工事は、推進菅を半径350mの縦カーブで弓取川底の軟弱な地盤を貫く工事で、石川県内初の試みであったため、成功させることに大きなプレッシャーがありました。
サヤ管となる推進管を蛇行させずに適正な曲線を描いて推進することが、本管の仕上がり精度に大きく影響します。
そのために日々行う管内測量の精度を高めるため、繰返しチェックするよう留意しました。
また、軟弱地盤であることから昇り区間の推進がうまく上がるかが最大の課題でした。そこで、掘進機に後続してシールド筒という管内から周辺地盤に薬液を注入して固める機能を有する機器を特別に装備しておきました。
予想どおり、昇り区間にさしかかると「沈み込み」が発生し、制御しづらくなったため、シールド筒から薬液注入を行い地盤を固めることで反力を得た掘進機は浮上に転じることができました。
他には、直線であれば容易なさや管と本管の隙間をモルタルで充填する中込注入作業も、曲線であるがために本管の浮力が大きく作用するため、工夫が必要でした。
先ず本管内を冠水させ浮力を制御した上で、モルタル注入も3回に分けて慎重に行った結果、浮きは発生しませんでした。
推進工事は、一度発進してしまうと後戻りができません。
土質データを含む事前に知り得る様々な施工条件から、予想される現象やリスクを検討し、前もって対策を講じておく必要があります。
そういった面では大変ですが、思惑が的中した時の喜びもまた、格別のものがあります。そういうことが、やりがいのひとつなのかなと思えることもあります。
44本の推進管全ての施工を終え、推進管内に照明灯を点灯させた時、リング状となった光の輪が等間隔に映し出されました。
これは推進管の施工精度が高精度であるため、大変綺麗に映りました。この光景を見た時はとても嬉しく、達成感を感じました。
橋や道路の工事とは異なり、今回の工事は完成すると全てが埋まって目に映ることはありません。
縁の下の力持ちではありませんが、普通の人が知らない場所でライフラインを支える仕事に参画していると思うことからも秘かな喜びを感じたりします。
(新人に向けてというよりも、今回工事の特徴の一つである女性技術者の活躍について考えます。)
今回の工事は、皆が石川高専出身の社員でチームを組み、完成させました。
その中で管理技術者という重要な役割を入社12年目の中堅女性社員に、その補佐役を入社1年目の新人女性社員に担当してもらいました。
男性が圧倒的多数を占め、「男の職場」というイメージが強い建設業において、
昨今は女性の活躍を推進する政府の後押しもあり、女性技術者活用の流れが徐々に強まってきている中、今回のような現場が増えてくると思われますが、課題がないとは言えません。
女性にとって大きな課題となるのが結婚や出産、育児と仕事の両立です。
そこは会社が協力して女性を応援する環境を作ることが大切と考えます。
その点、当社は地元の会社なので大手と違い転勤はありませんから、子育てもしやすい環境と言えます。
今回工事においても、2人でできる現場にでも3人体制で担当し、女性が休みを交代したり期間を調整できる体制を整えています。
また、現場に女性専用トイレを設置するなど、ハード・ソフト両面からの支援も行っています。
一般の方々は、現場監督というと力仕事を連想し、腕力を要求されると思いがちですが、技術者の役割は、要求された築造物を適正に作りあげるための指揮をとることなのです。
だから、技術力と管理能力さえあれば、女性であってもハンデはないと思います。
現場での長所としては、男性が言うと口調がきつく当たるような指示も、女性はソフトに言ってくれ、柔らかい和の雰囲気を作ってくれます。
協力業者の体調変化に気付いたり、安全面でも細かな配慮ができます。
調整能力においても、男性より高い面もあります。
短所は、工事全体の方向付けや流れを俯瞰的に見ることが少し苦手な点が挙げられますが、経験を積むことで改善される事柄かと思います。
今後、建設業界において女性技術者が増えれば、現場の環境や仕事の進め方などを変えていく起爆剤や推進力になると思います。
これからも女性の持つ良い面を現場に生かせる環境作りのバックアップ体制を充実させていきたいと考えます。
【 加賀建設株式会社 】
土木部 技術部長 大田 純平
土木部 係長 森高 靖子
土木部 係員 寺田 智子